新春対談 「地域を支える福祉人材の姿」

2018.1.12

新春対談  「地域を支える福祉人材の姿」

新春対談

「地域を支える福祉人材の姿」

 つながりの希薄化、暮らしに関する価値観の多様化等にともない、地域において「ともに支え合う機能」の脆弱化が進行しています。このような地域の変化から、地域における生活・福祉課題は、社会的な孤立を背景として、多様化・複雑化しており、公的サービスだけでは課題への対応が難しくなっている現状にあります。

 地域ニーズに対して、積極的に対応すべき福祉人材に求められる機能・役割はどのようなものなのか。新春を迎えるにあたり、地域ニーズに対して柔軟に対応し、地域共生社会を主導する福祉人材の姿はどうあるべきか、ソーシャルワーク専門職の職能団体である日本社会福祉士会会長西島氏との対談から探ります。

 

 

(写真:右から西島氏、塘林)

 

対談者

日本社会福祉士会会長:西島 善久 氏

全国社会福祉法人経営青年会会長:塘林 敬規

 

 

 

 

塘林:

 本日は、お忙しいなか、誠にありがとうございます。「地域を支える福祉人材の姿」をテーマに、対談をさせていただければと思います。

 はじめに、日本社会福祉士会のお取り組みについて、ご紹介いただけますか。

 

西島氏:

 このたびは、このような機会をいただき、ありがとうございます。

 日本社会福祉士会は、ソーシャルワーク専門職である社会福祉士の資質と社会的地位の向上を通じて、社会福祉の増進に寄与することを目的に、1993年に設立されました。社会福祉士の有資格者約200,000名のうち、本会の会員数は約40,000名です。

 ソーシャルワーク機能は、社会福祉業界のみならず、さまざまな分野において求められており、例えば教育や司法といった分野においても、本会会員が活躍しています。

 

 

Ⅰ さらに加速する少子高齢社会と福祉人材

 

塘林:

 まずは社会福祉をとりまく現状をあらためて確認したうえで、西島会長の考える「地域を支える福祉人材の姿」について、お聞かせいただければと思います。

 日本は、世界でも類を見ない超高齢社会に突入しています。2025年には、いわゆる団塊の世代の方々がすべて75歳以上となり、要介護高齢者が増大し、さらには労働人口についても減少が見込まれるなど、福祉の担い手の確保は喫緊の課題であるといえます。

 一方で、地域社会においては、「縦割りの公的制度」では解決することが困難な生活・福祉課題の増加、またつながりの希薄化といった変化が起こっており、このような地域ニーズに対応することのできる人材の育成が求められています。福祉人材の確保・育成について、西島会長はどのような認識をお持ちでしょうか。

 

西島氏:

 福祉分野における人材確保は、切迫した状況にあります。この状況を打破するためには、まず、「福祉を知ってもらう」ことからスタートしなければならないと感じています。福祉だからこそ味わうことのできる「醍醐味」、「魅力」、そして「やりがい」。これらを、どのようなかたちで社会へ発信し、プラスイメージとして広めることができるか。社会福祉業界は、重要な局面に立たされています。

 

塘林:

 平成27年度末に全国経営協が実施した調査によると、社会福祉法人の認知度は、2割程度にとどまり、またそのイメージは決して良いものといえません。法人として、そして業界として福祉ならではの魅力を発信していかなくてはならないと強く感じています。

 

 

出典:全国経営協 「全国1万人生活者意識調査」

 

問題が多い   19.8%   > 信頼できる  9.4%

閉鎖的     18.5%   > 透明性が高い 2.5%

経営が不安定  16.6%   > 経営が安定  4.4%

暗い       10.1%   > 明るい    4.6%

出典:全国経営協 「全国1万人生活者意識調査」

 

 

 また、福祉に対するポジティブなイメージを形成していくためには、特に小学生や中学生といった若い世代に対するアピールが効果的であると考えています。教育業界と連携し、福祉に触れ合う機会を設けることで「将来、福祉の仕事に就きたい」と考える人が増えていくことを期待しています。本会でも、教育と福祉の連携のあり方について、さらに検討を進めていきたいと考えています。

 

西島氏:

 福祉人材について、量的な確保はもちろんですが、質的な確保が大切であると感じています。限られた体制のなかで、「施設・事業所の福祉人材」として、また「地域を支える福祉人材」として法人の理念や使命を正しく理解したうえで実践できる人材をいかに育成できるかが大きなカギとなります。それぞれの地域において、福祉人材が求められる役割を発揮できるよう、全国経営協・全国青年会の皆さまには引き続きバックアップしていただきたいと思います。

 

 

 

 

Ⅱ 地域における公益的な取組の展開とソーシャルワーク

 

塘林:

 改正社会福祉法により、「地域における公益的な取組」がすべての社会福祉法人の責務として規定されました。全国経営協および本会は、事例集の発行やセミナーの開催等を通して、地域における公益的な取組の推進に努めていますが、「必要性は認識しているが、何から取り組めばいいのかわからない」、「地域ニーズをどのようにキャッチすべきか」といった声が挙がっています。

 地域における公益的な取組の推進に向けた福祉人材のあり方について、意見交換したいと思います。

 

西島氏:

 冒頭に塘林会長がおっしゃったとおり、地域社会における「ともに支え合う機能」の脆弱化の進行および地域課題の多様化・複雑化は、それらの課題への対応を難しくしている現状にあります。

 このような課題への対応に向けては、ぜひ社会福祉法人の方々に先頭を走っていただきたいと強く感じています。社会福祉法人が、地域における公益的な取組をより一層推進し、地域共生社会の実現を主導していくためには、少なくとも①高いソーシャルワーク機能をもった人材の確保・育成、②さまざまな課題に対応することのできる包括的・総合的な支援体制の構築が必要であると考えます。特に①については、社会福祉士の資格を有する職員の活用のあり方、社会福祉士資格取得の推進、さらなる専門性の向上に向けた機会の創出等に励んでいただきたいです。

 地域住民から地域ニーズを引き出し、多様な機関との連携を通じてそのニーズに対する解決策を模索することのできる人材をいかに育成するか。またワンストップの総合相談支援体制をいかに充実させるか。私はこれからのまちづくりの中心的な役割を担う社会福祉法人のさらなる活躍に大いに期待しています。

 

 

 

 

塘林:

 さきほど西島会長からご指摘いただきましたが、さまざまな課題に対応できる包括的・総合的な支援体制の構築に関して、私は特に「地域ニーズを発掘することのできる機能の強化」が必要だと考えています。

 例えば障害福祉事業のサービスとして、相談支援事業が展開されていますが、地域のなかにある困りごとは必ずしもこういった相談支援事業で解決できるケースばかりではありません。また、相談しようとしている地域の方が、自身の困りごとを正確に把握・分析し、自身の困りごとの分野に対応した相談窓口へと足を運ぶことは非常に難しいものであると認識しています。どのような悩みごとであっても、まずは受け付け、その後的確な支援や取り組みにつなげられる窓口のような役割を社会福祉法人が担うべきであると考えます。このような役割を担う意義をさらに浸透させるため、地域における社会福祉法人の使命をあらためて会員の皆さまと共有していきたいと思います。

 

西島氏:

 私たち日本社会福祉士会は、社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会において、社会福祉士の実践事例からソーシャルワーク機能を明らかにし、その役割を担うには養成課程から資格取得後の現任研修まで連続的な専門性の向上が必要なことや所属組織のサポート体制の重要性について提案をしています。また、専門委員会では社会福祉士のカリキュラムの見直しや、座学だけではなく地域での実習を通して、地域のパワーを引き出す能力を身に着けられるような議論が進められています。

 日本社会福祉士会では認定社会福祉士制度を活用して実践力ある社会福祉士の育成に取り組んでいます。特にスーパービジョンは重視しており、社会福祉法人の皆さまと連携して進めていきたいと考えています。

 今後は、制度動向を注視しながら、事業者団体である全国経営協・全国青年会と手を取り合い、福祉人材のあり方についてさらに検討を進められたらと思います。

 

塘林:

 継続性・非営利性、そして公益性が社会福祉法人ならではの特色であり、強みです。なぜ、今さら地域における公益的な取組の実施を責務化されたのか。この意味を、深く考えなければなりません。元来、地域ニーズに対し先駆的な取り組みを展開する法人も数多くありますが、制度上の制約を受け、本来事業のみに注力していた法人も多く存在していたのも事実だと思います。本会では、すべての社会福祉法人による地域における公益的な取組の実践に向け、調査・分析を進めていますが、その議論は最終的に「地域における社会福祉法人の使命を理解し、専門性を最大限に発揮できる人材をどのように育成するか」に行き着くのではないかと考えています。今後は、地域における公益的な取組の普及に向けた専門性のあり方等について、日本社会福祉士会の皆さまからご意見をいただきながら検討を進めていければと思います。

 

 

 

西島氏:

 専門性を向上させていくという意味においては、社会福祉士という資格の取得が最終的なゴールではありません。養成の過程においては、実習を通して地域と向き合い、資格取得後についても現場での実践を通して専門性を高めていけるような体制をつくっていくことが必要です。社会福祉法人の皆さまには、職員の専門性を高められるような育成に努めていただきたいです。

 

 

Ⅲ その先を見据えて

 

塘林:

 地域共生社会の実現に向けて、どのような取り組みが求められているとお考えですか。

 

西島氏:

 専門職として権利擁護をベースとし地域の課題を解決すべく専門性を向上させる、またワンストップの総合相談支援体制を構築することのほかに、地域住民に「我が事」として参画できるような意識を醸成させることも、私たちの役割の一つであると認識しています。この意識を地域住民一人ひとりが持ちながら生活することで、住民同士が日々の変化に気づき、寄り添いながら支え合うことができる地域となっていくでしょう。

 

塘林:

 そのような意識を醸成するために、私たち社会福祉法人は、例えば地域住民が「認知症について、もっとしりたい」と感じたときに、気軽に相談できるような、だれでも立ち寄りやすい空間・雰囲気づくりをすることが重要ですね。

 また、西島会長がさきほどお話しされた「地域住民が我が事として参画できる地域づくり」に向けて、そういった意識を醸成するために必要な機能を私たち社会福祉法人はもっていると考えています。例えば、施設・事業所といった場所、また長い歴史のなかで蓄積してきたノウハウや技術、知識といった「社会福祉法人だからこそ有するパワー」を最大限に活用すべきです。この機能の活用に向けては、NPO法人や民生委員・児童委員といった関係者との連携も効果的な一つの手段です。

 本来事業のみならず、このようなより良い地域づくりのための実践の積み重ねを通じて、社会福祉法人の存在意義をあらためて広く社会にアピールすることが最も重要であると考えています。

 最後に、「地域を支える福祉人材の姿」とは、どういったものでしょうか。

 

西島氏:

 多様化・複雑化する課題に対して、すべてを解決することのできるスーパーマンのような存在ではなく、種別といった枠を超え、「支援をつなぐ」ことのできる人材でしょうか。このような人材の育成に向けては、本来事業のみならず、研修等を通して、さまざまな事例にできるだけ多く触れ、深く考え、実践につなげる過程が求められます。

 よく「種別の垣根」という言葉を耳にしますが、この垣根をつくっているのは、私たち福祉関係者自身ではないでしょうか。種別という枠を超え、横断的にさまざまな主体と連携し、それぞれの主体のノウハウや強みを活かすことで、地域の課題を解決する。こういった流れをうみだすことが必要でしょう。

 社会福祉関連の制度ができるまで、私たちの祖先は、すべての困りごとが守備範囲でした。制度ができてから、「制度の狭間」といわれる課題がうまれ、現在、その狭間の課題への対応が求められています。今一度、福祉の原点に立ち返り、私たちの実践はそもそもどういったものなのか、再考する必要があると考えます。

 昨今、多くの事業体が社会福祉事業に参入していますが、地域共生社会の実現に向け、社会福祉法人による地域実践が求められています。若い原動力として、全国青年会の活躍を期待しています。

 

 

塘林:

 真の意味での社会福祉法人の役割が、今まさに問われています。西島会長もお話しされましたが、「種別の垣根」をつくっているのは、私たち自身なのではないかと感じています。何らかの支援を必要とする方からみれば、事業所の主体がどうであるかは重要ではなく、自身の悩みや困りごとを解決に導いてくれることが重要なのです。今回の制度改革を好機ととらえ、様々な課題にチャレンジし、地域の中で本当に必要とされる社会福祉法人でなくてはならないと強く感じています。

 また、西島会長のお話しから、多様な主体と連携し、地域ニーズに対して、支援をつなげ、地域においてその人なりの活躍の場を見つけることができるような人材育成と体制構築について、社会福祉法人としてまだまだ足りないところがあるとあらためて実感しました。地域共生社会の実現に向けて、福祉人材はどうあるべきなのかについて考える非常に有意義な機会となりました。

 本日はどうもありがとうございました。

 

 

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