第6回 「広報のい・ろ・は」(最終回)

2018.8.9

第6回 「広報のい・ろ・は」(最終回)

第6回 「広報のい・ろ・は」

『広報・PR活動のプロセス』

 

 

著者:大柳 満(おおやなぎ みつる)氏 プロフィール

㈱ジェーワン 専務執行役員プロデューサー

 

 1992年に㈱ジェーワン入社。携帯、家電、食品、不動産、金融、アミューズメント施設など生活導線全般にかかわる民間企業広報や商品広報、環境省や経済産業省などの官庁や自治体関連の広報業務のサポートなど、幅広い領域の得意先を担当。記者発表会や懇親会、プレスツアー等の企画立案・実施、プレスリリースやFACTBOOKの制作、マスコミプロモートなど、多種多様なPR業務を経験。2013年より、女優・タレントの東ちづるが代表を務めるマイノリティPR・表現団体である一般社団法人 Get in touchのPRを担当。身体障害、自閉症をはじめとした発達障害、LGBTs、難病など、現代社会で生きづらさを抱える「マイノリティ」への理解促進、啓発を図る。

 

 

 

◎イントロダクション

 社会福祉法人は、さまざまな事情を抱える方がたの「生きる」を支える役割を果たしており、健全な社会を実現するためには、なくてはならない存在です。

 こうした社会福祉法人の姿を、当事者やご家族のみならず、多くの国民が「知り」、そして、「理解」し、「相互にコミュニケーションする」ことが望ましい社会の姿であり、「広報・PR」は、そこに大きく貢献するアクションであるといえます。

 これまで、5回にわたり「広報・PR」の必要性や手法などを解説しました。

 最終回では、「広報・PR」を進める際のプロセスを整理いたします。

 

 

1.年間の広報・PR計画を立てる

 法人や団体における広報・PR活動は、実施している事業のスケジュールに即したかたちで、プランを立てる必要があります。取り組みやサービスをはじめ、イベント開催などを年間スケジュールに落とし込みます。そのうえで、それぞれの事案をメディアを通じて発信すべきタイミング=広報・PRに落とし込みます。

 新聞であれば、少なくとも該当する事案が実行される2~3週間前にはプレスリリースとして発信することが必要ですし、雑誌であれば、1~2ケ月前の情報提供が必要です。このようにメディアによって進行スケジュールが違うので、その点を勘案した広報・PRスケジュールを検討することが必要になります。

 

 

2.広報・PR素材になりえるかを判断

 すべての情報が広報・PRに落とし込める情報とは限りません。第4回で解説したメディアがニュースとしてとらえるであろう10のツボの要素が入っているかどうかを判断します。入っていない場合は、これらの要素を加えた事柄にできるか否かを再度、検討します。

<10のツボ>

①意外性 (ユニークさ、斬新性、ネタ性)

②物語性 (感動性、共感性、秘話性)

③権威性 (著名性、大衆性、カリスマ性)

④社会性 (時代性、多発性、硬軟社会テーマ)

⑤国際性 (国境を越えて話題になる価値・異文化差異)

⑥影響性 (進化発展性、模倣性、波及性)

⑦記録性 (歴史性、オンリーワン)

⑧地域性 (ある地域に特有な状態)

⑨季節性 (季節の時事に合致する事実)

⑩対決性 (競合比較・対立軸)

 

 

3.訴求メディアの選定

 メディアに提供できる情報に仕上がった後は、どのメディアが反応しそうな情報なのか?を考えます。地方で行われるイベント告知を記事化したい場合は、在京のメディアに情報提供しても意味がありません。地方紙や在京新聞の地方支局、地方テレビ局など、地元話題を取りあげる可能性の高いメディアへ情報提供することが望ましいでしょう。

 「日本初」や「業界初」のような全国話題になり得る情報であれば、在京の新聞やテレビに対し情報提供を行います。

 絵映えするようなイベント等であれば、取材案内状を作成し、テレビやWEB(動画)などのメディアに対して取材案内を送付します。

<プレスリリースと取材案内の違い>

  • 「プレスリリース」とは、企業や団体のニュースが盛り込まれた文面で、それだけで記事が作成できるもの
  • 「取材案内」とは、企業や団体の取り組みに対して取材依頼をかけるもの。それだけでは記事にはなり得ず、取材を行い、はじめて記事になる。

 

 

4.プレスリリース・取材案内の送付&メディアプロモート活動

 プレスリリースや取材案内を適切なメディアへ発信します。

 発信方法は、FAXやメール、郵送などさまざまです。最近は、メールによる配信が増えていますが、FAXでの情報提供を求める新聞記者やテレビの報道記者も多いのが現状です。

 情報提供した後は、主要メディアには電話などで、記事化や取材のプロモート活動を行います。毎日、山のようなリリースを目にする記者に対して、少しでも検討してもらうためには、リリースや取材案内の書き方に加えて、実際に記者と会話してこちらの意図(何がニュースなのか?)を直接伝える方法が理想です。

<PRストーリーを描く>

 インターネット、スマートフォン等の登場によって、総体的な情報量が増大し、ターゲットへのリーチが非常に難しい時代です。

 それは、企業や団体が発信したい情報と一般生活者が求める情報をメディアを活用してマッチングさせるPR活動において、訴求したい情報をどうしたら魅力的にみせることができるのか?につながる大きな課題です。

 では、魅力的な情報とは何か?

※クリックすると拡大します。

 

 

 

 

 新聞やテレビのニュース(事件・事故を除く)は、「新奇性」と「一定集団の関心時」をとらえた情報で構成されており、主に事実を端的に伝える役割です。

 その多くはFACT自体にインパクトをともなうモノであり、発信者側が出したい情報がすべてこの条件に当てはまるともいえません。

 そこで、必要となるのが「ストーリー性」です。

 多くの人は、前述のような新奇性や自分の関心時に照らして、情報の価値判断を行っていますが、それだけでは無く、その背景にある「ストーリー」を上手く構築することで、モノやコトを魅力的に見せ、受け手(メディアや一般生活者)には必要な情報としてとらえてもらえるように誘導することがPR プロモートのカギとなります。

 

<PRストーリーの要素>

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【ご質問①】

 コラムを読み、テクニカル的な事は十分理解できました。また、広報の重要性も感じました。ただ、それらを駆使するとなるとやはり、結局なにから手をつければいいのかが分かりません。

 ファーストステップとして、選択するなら、どのツールでしょうか?教えて下さい。

【回 答①】

 広報・PRの基本は、自身の事業を世の中に発信し、共感・賛同を得る行為ですので、まず、(現状の)年間の事業計画にそって、どのタイミングで、どんな情報発信ができるのか?の年間の広報・PR計画(戦略)をたてることをおススメします。

そうすることで、あらためて、その事業の一つひとつが広報・PR的に世の中(≒メディア)にインパクトを与える内容なのか否かを客観的に精査する機会にもなります。

 もちろん、すべての事業がインパクトを与えられるとは限りません。事業FACTごとに、以下の整理を行い、②に関しては、どんな工夫をすれば良いのか?を検討することです。③は全ての情報を発信するチャネルとして活用することが前提です。

<事業FACTの情報発信の選別>

①外部メディアへ発信できるFACT

②工夫すれば外部メディアへ発信できるFACT

③HPやSNSなどで発信するFACT

 

【ご質問②】

先日、法人でプレスリリースを出し、取材にきていただきましたが、私たちの意図したところとは違うところをピックアップされてしまいました。このように意図しない方向で報道されてしまうこともあるかと思いますが、そうならないために気をつけなければならないところがありましたら教えてください。

【回答②】

 対メディアの広報・PRは、自身の情報をメディアに理解いただき、彼等のフィルターを通じて報じてもらう行為ですので、時々、こちらが意図しない内容が記事になったり、映像になってしまうことがあります。こうしたことは、完全に防ぐことができませんが、最小限にとどめるには以下の広報・PR対応が必要です。

 

<メディア取材対応の心得>

1.プレスリリースの書き方

➡プレスレリースには、必ず、こちらが記事にして欲しいポイントを明確に記載する。

タイトル、第一パラグラフに、キチンと整理する。

2、取材対応

①新聞・通信社

<事前問い合わせ>

➡プレスリリースに興味を持っていただいた記者からの電話の問い合わせを想定した場合、先ずは、お礼を差しあげながら、どこに興味を持たれたのか?をさりげなくヒアリングする。

➡この段階で、こちらが意図するポイントでは無い部分にフォーカスされているようであれば、丁寧にご説明し、認識のずれを修正。どうしても認識のずれが解消できない場合は、丁重に取材をお断りする。

<取材時>

➡取材にお越しいただいた際は、改めて、そのリリース内容(サービスやプロダクツ等)の主旨をこちらから丁寧な説明を加える。

➡「何かの意図を持って取材しているかな?」と感じた時には、自社の情報が誤認されない、ネガティブにならないような、取材対応を心がける。誘導質問にも気を付ける。

➡記事のなかに顕著な事実誤認があれば、訂正記事を求めます。

②テレビ

<事前問い合わせ>

➡報道番組ではあまり起こりませんが、情報・ワイド番組などの取材ディレクターさんからの取材要請は注意が必要です。

➡制作の上層部からの指示で、取材ディレクターさんが取材先へのアポイントメントを取り付ける傾向にあり、彼等は取材の狙いなどをキチンと把握していない場合もありますので、取材要請が入った際は、必ず、番組の企画書をいただき、内容確認を行ったうえで、取材対応の可否を判断します。

<取材時>

➡取材を受けると決定した際も、取材現場では、自社の情報が誤認されない、ネガティブにならないような、取材対応を心がける。

➡特に、生中継などの場合は取材ディレクターさんと充分な事前調整を図る必要があります。

➡オンエア後、顕著な事実誤認があれば、番組サイドへ訂正報道を求めます。

③WEB

➡概ね、①の対応と同様です。

➡記事化されてから、事実誤認などが顕著な場合は、訂正を求めます。紙媒体と違って、WEBの場合は、彼等が取違いを認めれば記事の訂正は比較的、容易に対応いただけます。

 

 

あとがき

 インターネットの登場によって、企業・団体・個人がいつでも多くの人に発信・主張できるようになり、良い情報も悪い情報も、正確、不正確な情報も簡単に拡散・波及できる時代です。

 こうした時代だからこそ、社会福祉法人の皆さまの生業=社会課題に向き合う取り組みをキチンと「知ってもらう」ための「広報・PR」は欠かせません。

 自社のHPやSNSなどのオウンドメディアによる発信、そして、正確かつ客観的な視点を持ったメディア報道による情報発信など、戦略的な「広報・PR」によって、社会における皆さまの取り組みの価値を高めていただけたら幸いです。

 

 

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 第1回~第5回コラムについては、以下よりご覧いただけます。

第1回 [広報のい・ろ・は」

第2回 「広報のい・ろ・は」

第3回 「広報のい・ろ・は」

第4回 「広報のい・ろ・は」

第5回 「広報のい・ろ・は」

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